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露元高官が相次ぎ逮捕 政権浮揚か、政治闘争か

ロシアで3月末、閣僚経験者2人が逮捕された。汚職はロシアの伝統的病理とされるが、政権中枢にも近い人物が相次いで逮捕されるのは異例だ。逮捕の背景をめぐって露メディアや専門家の間では、汚職が支持率低下の一因となっている現状を重く見た露政府が政権浮揚に乗り出したとの見方に加え、2024年のプーチン大統領の退任を見据えた権力移行の下準備だという見方さえ出ている。いずれにせよ事件は政治的思惑をはらんでいると見る向きが強く、今後の推移に注目が集まっている。

(モスクワ 小野田雄一)

ともに逮捕に反発

3月末に詐欺容疑などで逮捕された元政府高官の一人は、1991年から2013年までの間、極東のハバロフスク地方知事や極東発展相などを歴任したビクトル・イシャエフ氏。退官後に副社長待遇で迎えられた露国営石油企業「ロスネフチ」に、自身の持つ不動産会社との賃貸契約を不当な価格で結ばせ、ロスネフチ側に約500万ルーブル(約870万円)の損害を与えたとの容疑がもたれている。

一方、12年~18年まで「開かれた政府」担当相を務めたミハイル・アビゾフ氏も同時期に逮捕された。アビゾフ氏の逮捕容疑は11~14年、自身が所有する会社の価値を不当につり上げた上で露国営企業に売却し、数十億ルーブルの不正な利益を得た-というものだ。

イシャエフ氏は「5年間で500万ルーブルというのは、私の収入からすれば微々たる額だ」と逮捕に反発し、不法行為に手を染める動機がないとして容疑を否認。アビゾフ氏も「民事上の取り引きが刑事事件にされた」などと否認している。

汚職への不満強まる

ロシアでは、警察官に賄賂を渡して交通違反を見逃してもらうなどの小さな汚職から、政治家や政府高官らによる巨額収賄や横領に至るまで、汚職が蔓延(まんえん)している。露内務省の統計にあらわれているだけでも、2016年は汚職による国家の損失額は約190億ルーブルで、翌17年は375億ルーブルに上ったという。

汚職に対する国民の不満も強まっている。露独立系世論調査機関「レバダ・センター」が定期的に行っている調査では、「汚職」が重大な社会問題だとする回答率は15年2月は21%に過ぎなかったが、年々増加し、19年2月では41%となった。これは1位の「物価値上がり」(62%)、2位の「貧困」(44%)に次ぐ順位だ。15年2月の調査では「汚職」が6位だったことを考えれば、蔓延する汚職への不満の高まりが、プーチン政権の直面している支持率低下の一因となっていることが分かる。