原発のテロ対策施設をめぐり原子力規制委員会が完成期限の再延長は認めない考えを示した。
九州電力や関西電力などは、期限に間に合わないとの見通しを表明している。規制委は施設が完成しなければ原発の運転停止を命じるとの厳しい姿勢を打ち出した。
電力各社は原発の安全性を高めるため、対テロ施設の完成を急がねばならない。各社がそろって期限に間に合わないという事態には驚くしかない。
規制委が電力会社の見通しの甘さを批判するのは当然としても、規制委自身が電力会社との意思疎通を欠いていたことは否めない。当初は個別の事情を聴いて判断する姿勢をみせていたはずだ。新規制基準の合理性を含めて検証すべきである。
原発は資源小国の日本にとって重要な電源である。今後もその活用を促すためにも安全性向上の取り組みを続ける必要がある。
テロ対策施設は、平成23年の東京電力福島第1原発事故を受けて策定された新規制基準で設置が義務づけられた。原子炉建屋の工事認可後、5年以内に設置するように定められ、九電の川内原発1号機は来年3月に期限を迎える。
だが九電や関電、四国電力の施設工事が遅れており、期限より1~3年遅れる見通しだという。
すでにこの期限は1回延長されており、規制委の更田豊志委員長は再延長は認めず、期限内に完成しなければ、原発の運転を100%認めないと述べた。
対象は、航空機衝突などのテロ攻撃で原子炉を冷却できなくなった際に遠隔操作で非常用電源や注水ポンプなどを作動させるために必要な施設だ。各社にとって早期完成は急務である。
ただ、電力各社が対策施設の建設を申請してから認可を得るまでには数年を要している。規制委との協議で工事内容が大きく変更された事例も多い。一律で期限を区切るのではなく、こうした事情も考慮して完成時期を決めることが現実的である。
規制委の安全審査が停滞し、国内で再稼働した原発は9基にすぎない。さらに運転停止に追い込まれる原発が増えれば電気料金の値上がりや、地域経済への打撃も招く。温室効果ガスの排出抑制も難しくなる。原発のテロ対策や規制委のあり方について、政府や国会も本腰を入れて検討すべきだ。