朝晴れエッセー

わが家の第二幕・4月26日

うららかな春の一日、夫の三十三回忌の法要を営んだ。すでに父親の年齢を超えている3人の息子たちを見るにつけ、36歳で旅立った夫の無念を改めて思った。

夫は道場を開いていて子供たちに柔道を教えていた。自らも鍛錬を積んでいた頑健な夫がよもや突然倒れ、そのまま帰らぬ人となるなどあるはずのないことだった。真に青天の霹靂(へきれき)だった。

幼子を抱え、奈落の底で途方にくれた私は、一連の仏事の後、郷里に戻った。私たちはぬぐい去ることのできない悲しみを背負っていたが、母と兄は陰に陽に支えてくれ、そのことはとてもありがたく幸運なことだった。亡き人を囲み同志として生きてきた4人に、楽しい思い出がたくさんあるのも、母たちのおかげだと思っている。

5年前、息子たちは共にクリニックを開院した。そしてこの春、新しいクリニックが竣工する。設計の際に3人から、道場を併設したい旨の相談を受けた。私は息子たちの胸に秘められた思いの丈をはじめて知り、不覚にも涙がこぼれた。父が諭した「三本の矢」の話、小さな体にたたき込もうとした柔道の神髄、それらの教えは彼らの中で根付き育ったのだ。

家族は14人のファミリーとなり、にぎやかな供養会だった。墓前に手を合わせる私の耳に、夫からの「ごめん、ありがとう」の声が聞こえた。新しい時代の幕開けとともに、わが家の第二幕が始まろうとしている。

斉藤 伯子(みちこ) 66 宮城県栗原市