天才を育てた師匠 杉本昌隆八段(4)「引退を考えた」-杉本八段を襲った病

将棋を指す杉本昌隆七段=名古屋市東区の杉本将棋研究室(宮沢宗士郎撮影)
将棋を指す杉本昌隆七段=名古屋市東区の杉本将棋研究室(宮沢宗士郎撮影)

  将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(16)の師匠、杉本昌隆八段(50)への独占インタビューの4回目。杉本八段には、引退を考えた時期があったそうです。(聞き手・中島高幸)

 --奨励会で10年過ごし、プロになり、今年で29年。いろいろあったことと思いますが、特に印象に残ったことは

 杉本 プロ入り1年目で王位戦の挑戦者決定リーグ入りしたことは非常にうれしかったですね。中原誠十六世名人や兄弟子の小林健二九段と対戦できたことが心に残っています。でも、どちらかというと、悔しい思い出のほうが圧倒的かな、と思うんですね。2年目で順位戦C級2組で8勝2敗だったのですが、(同じ成績で並んだ場合、前年度の成績をもとにした順位が高い棋士の昇級が優先されるため)頭ハネで上がれなかったんです。順位戦の厳しさを知ることができました。正座ができなくなる病気になり、つらかった時期もあります。

 --そんなことがあったのですか。

 杉本 平成19(2007)年、B級1組に在籍しているときに膝を痛めまして。「滑膜炎」という、膝に水がたまる病気でした。将棋盤の前に座るのが非常に困難になり、正座ができなくなりました。このときの順位戦は4勝8敗でぎりぎり残留できたんですが、半月ぐらい入院して、医者からは「治るかどうかわからない」と言われてしまいました。

 --今は大丈夫なのですか?

 幸い今は、正座ができるようにはなりました。いつか再発するかもしれませんが、10年近く大丈夫なので大丈夫と思います。

 --将棋は正座しなければならないので大変でしたでしょう

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