旅の途中で休憩するのは同じような顔をした三美人。しかし、つぶさに見てゆくとその違いに気づく。
画面中央の丸髷(まるまげ)を結った女はキセルをもち、お歯黒をして眉もそってある。左手前にすわった女もお歯黒にキセルをもつが、こちらは眉を残してある。2人はいずれも既婚者とわかる姿をしているが、絵の主人公は最も若い娘姿で描かれている右の道中合羽(どうちゅうがっぱ)の女であろう。
作者の藤麿(ふじまろ)は、いずれの女性たちも黒目を大きく、毛筋も指も丁寧に描き込んでいる。こうした作風などから、女性を繊細に描くことでは右に出る者なしとうたわれた喜多川歌麿の門人と推定されている。
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4月27日から6月9日まで京都市中京区の京都文化博物館( http://www.bunpaku.or.jp/ )で開催される「美を競う 肉筆浮世絵の世界」(産経新聞社など主催)。その華麗な作品を紹介する。
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「美を競う 肉筆浮世絵の世界」展は初日の4月27日午前10時30分から、美術史家の鈴木浩平氏による講演会を開催。ゴールデンウイーク(GW)連休中の5月5日、小学生以上を対象に、浮世絵団扇を作るワークショップなど、関連イベントも開かれる。