道端アンジェリカさん(33)は平成29年、モデルという人に見られる仕事でありながら、皮膚病の「乾癬(かんせん)」を公表した。見た目に影響が出る病気だけに人に言えずに悩んでいたが、公表後は、周囲の温かい反応もあり、前向きに受け入れられるようになったという。(聞き手 油原聡子)
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初めて症状が出たのは6年くらい前。ひざの裏とひじに出ました。肌が乾燥してピンク色になっているような状態です。でも、モデルの仕事に支障はなく、小鼻やおでこの生え際が少し乾燥する程度でした。
ひどくなったのが平成28(2012)年の秋です。腕やおなか、背中などに小さな発疹が増えていきました。調べていくと、乾癬の画像が自分の症状と似ていて、大学病院の皮膚科を受診したんです。
《乾癬は、皮膚が赤く盛り上がり、はがれた皮膚片が落ちる症状が特徴。新薬で症状が治まる患者が増えている。しかし、見た目から、うつる病気ではないかなどの誤解が絶えない》
すぐに乾癬と診断されましたが、原因が分かったことで、「これで治療ができる」とプラスに捉えられました。
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診断後は注射での治療で症状を和らげ、自己注射もするようになると、通院の負担も減りました。
ただ、公表したら仕事がなくなるのではという心配もあり、周囲には話せなかった。症状が出ているところを隠すため、スタイリストさんに「加圧トレーニングをしてあざができたから長袖のワンピースにしてね」と言ったり、頭皮に症状が出ているときは、自分で髪をセットして、ヘアメークさんには「前の仕事でセットしたからそのままにしてね」と触らせないようにしたりしていました。
ファンの方から「アンジェリカさんみたいになりたい」と言われても、私は自分の肌を隠すのに必死。嘘をついているみたいで、期待に応えられていない自分がつらかったです。
公表のきっかけは、個人的な感情からでした。平成29年の5月、インターネットで「道端アンジェリカは、スーパーフードを食べているのに肌が汚い」という書き込みを見ました。「ネットに心ない言葉を書く人たちは、私が乾癬だと公表したらどう思うんだろう」と怒りがわいてきた。乾癬の痕が分かる写真と一緒に、(写真共有アプリの)「インスタグラム」に投稿しました。
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公表後の反応は、予想とは違いました。同じ病気の患者さんからは「勇気づけられます」と言われましたし、芸能人やほかのモデルさんからも「実は私も乾癬です」って告白されたのです。自分一人じゃないならなおさら、前向きに発言をしていかないといけないと思うようになりました。
乾癬はあまり知られていない病気です。でも、私は公表してすごく楽になりました。恐れていたような仕事への影響はなく、本人が思っているほど周りは気にしていないのかもしれません。乾癬は心の病とも言われているので、自分が楽になることがすごく大切。患者さん本人も、もう少しだけ心の扉を開くといいのかもしれません。
海外では有名なスーパーモデルが、乾癬の症状が出たままショーに出ることもあります。私が好きなアメリカのタレント、キム・カーダシアンは、自分の乾癬の痕の写真を「セクシー」というコメントとともに公表しています。日本とは感覚が違いますが、すばらしいこと。
乾癬は「人から人へはうつらない」のに、誤解している人も多い。「乾癬」という名前を変えたらいいのかもしれません。昨年は乾癬患者さんのファッションショーの演出をしましたが、みんな喜んでいました。おしゃれは楽しいし、前向きな気持ちはすごく大切。日本でももっと乾癬がオープンになって、偏見をなくせるように活動していきたいと思っています。
道端アンジェリカ
みちばた・あんじぇりか 昭和60(1985)年、福井県生まれ。「S Cawaii(エス カワイイ)!」や「GLITTER(グリッター)」などでモデルとして活躍。姉のカレンさん、ジェシカさんもモデル。著書に「アンジェリカ流 無理をしない『ベビ活』」(光文社)。