「観光資源」の樹氷守れ 蔵王でアオモリトドマツ立ち枯れ対策

 蔵王の樹氷を形づくるアオモリトドマツ(別名・オオシラビソ)の林で、キクイムシなどによる立ち枯れ被害が深刻になっている。県内でも平成29年ごろから被害が広がっており、東北森林管理局では被害状況の調査に本格的に着手、今年度は県などと連携し、自生苗の採取・移植など再生に向けた取り組みを試験的に実施する。同管理局は山形県側でも今年度から移植試験を新規に実施。観光資源として注目される蔵王のアオモリトドマツ林回復に本腰を入れる。 (高梨美穂子)

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 アオモリトドマツはマツ科モミ属の常緑性の針葉樹。日本の本州だけに分布し、多雪地帯の東北地方に多い。蔵王(山形、宮城県)のほか八甲田山(青森県)、八幡平(岩手、秋田県)などで自生しており、樹氷はアオモリトドマツに氷と雪が付着してできあがる。

 ◆キクイムシの活動

 蔵王では近年、インバウンド(訪日外国人客)を中心に樹氷が観光資源として脚光を浴びており、29年、蔵王地区(宮城県側)の観光客入込数は県全域の6・3%を占める約398万人(県観光統計概要)。「樹氷は大きな役割を担っている」と県森林整備課では認識する。

 仙台森林管理署などによると、県内で立ち枯れが発生しているのは山形県境付近の刈田岳から屏風岳に至る稜線(りょうせん)付近。昨年秋の同署の調査で約500ヘクタールの範囲で立ち枯れした木が点在しているのが確認された。トドマツノキクイムシ(体長約3、4ミリ)に開けられた穴がどの木にも多くみられた。強風や夏場の高温化で樹勢が弱ったところに、もともと生息しているキクイムシの活動が活発化したのが原因とみられるという。

 山形県側では約3年前からトドマツノキクイムシの被害が確認されていた。移植など取り組み

 同管理局では、これまでにドローンを活用した被害調査などを実施。今年度は(1)自生苗を採取して試験的に移植(2)稚樹周辺のササ刈り払いの生育への効果を比較検証(3)種子の採取-などに取り組む。

 現地は国定公園の特別保護地区で国有保安林。そのため伐採など人為的に手を加えるのは難しい。移植では、遺伝子撹乱(かくらん)などが起きないようなるべく近い場所のものを使用するという。

 維持・回復に向けては、森林総合研究所や宮城県林業技術総合センターとも連携。県は種子の精選など育苗面などで協力する。

 標高が高く強風にさらされ、冬は雪や氷に閉ざされて低温が続く蔵王。「高さ7、8メートルでも樹齢約170年のものもある」(同管理局)というアオモリトドマツの再生には息の長い取り組みが必要になりそうだ。

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