工業製品の原材料として広く使われるアンモニアの簡単な合成法を東京大の研究チームが開発した。室温で1気圧という普通の条件で実用レベルの合成効率を達成したのは世界初で、エネルギー消費の少ない画期的な手法として期待される。英科学誌ネイチャー電子版に24日、掲載された。
窒素化合物のアンモニアは医薬品や肥料などの重要な原料。約100年前に欧州で開発され、開発者がノーベル賞を受けた「ハーバー・ボッシュ法」という方法で合成されている。
この手法は400度以上の高温と、100気圧を超える過酷な条件で窒素と水素を反応させる。全世界のエネルギー消費の1~2%がこの合成法に費やされているとされ、多くの二酸化炭素を排出する問題点も抱えている。
新たな合成法は、反応を促進させる触媒にモリブデンという金属の化合物を使用。レアアースのサマリウムを使った試薬に、窒素と水を加えて反応させる。
熱や圧力を加える必要がなく、フラスコでも合成でき、二酸化炭素もほぼ出さない。高価なレアアースを使う点が課題だが、再利用や安価な試薬で代替する見通しが立っているという。
西林仁昭(よしあき)教授(化学)は「ブレークスルーに成功した次世代型の合成法だ。コストを下げて持続可能な社会につなげたい」と話す。