国土交通省が、衛星通信回線などを介して操縦する小型の無人船舶のガイドライン(指針)を作成したことが24日、分かった。近く公表する。指針は遠隔操縦小型船舶の運用について、関係法令に基づき、「操作範囲は操縦者から目視可能な3カイリ(約5.6キロ)以内」などの基準をまとめている。遠隔操縦小型無人船舶は現在、公的機関の海洋調査などの利用に限られているが、国交省は指針で法律上の位置づけを明確にし、離島物流や沿岸警備などへの実用化を促す。
指針は遠隔操縦小型船舶について、船舶安全法上の「特殊船」として総トン数20トン未満とするなどと定義。船外から遠隔操作する操縦者には小型船舶免許証が必要とし、船舶が多かったり遊泳者がいたりする海域では航行しないことや、航行時間を日の出から日没までに制限し、国が船舶検査を行うことを定めた。
一方、周辺状況を把握して操縦者に伝える機能を持つカメラなどを備えている場合は、操縦範囲や時間帯制限の緩和も可能とした。関係法令の施行に合わせ、6月3日に発効する。
遠隔操縦の小型船舶をめぐっては、海上保安庁が昨年から一部の海域で海洋調査に活用している。ただ、これまでは「そもそも船と定義するのか」といった法的な位置づけの曖昧さがあり、企業や官庁での実用化が停滞していた。
政府や国内海運大手は令和7(2025)年に遠隔操縦小型船舶の技術を発展させ、自動運航船の実用化を目指している。日本財団は今月、22年には国内船舶の半数が無人運航船になり、経済効果は年間1兆円になるとの試算を発表した。国交省は「無人運航船が実用化された将来も、非常時には遠隔操縦の技術や法整備は必要となる」とみて、指針の周知に努める。