台湾南部・高雄市の韓国瑜(かん・こくゆ)市長(61)は23日、同市役所で記者会見し、所属する野党、中国国民党が2020年1月の総統選に向けて候補者を選ぶ党内予備選に出馬しない意向を表明した。韓氏は各種世論調査の支持率でトップを走ってきた。韓氏の出馬辞退により、政権奪還の可能性が高まる同党で鴻海精密工業の郭台銘(かく・たいめい)会長(68)が最有力候補となった。
韓氏は昨年12月に市長に就任したばかりだが、メディアの注目度が高く、党執行部が強制的に指名出馬させるとの観測が根強かった。韓氏は「現時点で現行制度の予備選に参加することはできない」と表明。党の上層部に「密室での調整」をやめて民意に注意を払うよう呼びかけた。
国民党寄りの台湾紙、聯合報(れんごうほう)の22日付の世論調査によると、国民党で出馬が取り沙汰された4人のうち、韓氏は26%で1位、郭氏は19%で2位だった。前回2016年の総統選で出馬し落選した朱立倫(しゅ・りつりん)元主席(57)は13%、王金平(おうきんぺい)前立法院長(68)は11%だった。
一方、雑誌「遠見」(電子版)が高雄市民を対象に行った20日発表の調査では、53・7%が韓氏の総統選出馬を「支持しない」との結果が出た。韓氏はこれまでも「現時点では」と留保条件付きで出馬を否定してきたが、郭氏の17日の出馬表明を受け、韓氏の支持者が出馬を求める約6万人分の署名を提出、正式な意思表明を迫られていた。韓氏は3月、郭氏から高雄市への巨額投資で合意しており、出馬に利はないと判断した可能性がある。
(台北支局 田中靖人)