杉本 藤井は直前に朝日杯で初優勝しており、実力は証明されていました。弟子と対局するというのもありますが、一人の棋士として、強い棋士と対戦するという気持ちもありました。対局した部屋は、奨励会のころによく寝泊まりしていたんです。そこで昔のことや、村山聖(さとし)九段のことを思い出したんです。棋士が棋士でいられる幸せをかみしめながら対局しました。対局中に窓から外をみてて、風景は変わらないな、とか。
--藤井七段が勝ちましたね。対局後は涙ぐんでおられました
杉本 私の師匠(板谷進九段)のことも思い出しました。一緒に修業した仲間だったりやめていった仲間、弟子たちのこと…。色んな人とのつながりを思い出したりして。こうして注目されていることは幸せだという思いでした。
--昨年5月、藤井七段に段位で並んだことがありました。その感想が意外でした
杉本 悔しいという感情があまりないですね。この世界は分かりやすく、実力の世界ですから。藤井は自分の実力で類い希なる成績と結果を出し続けてハイスピードで七段昇段したわけです。改めてたのもしいと思いました。 =(2)に続く
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【プロフィル】杉本昌隆(すぎもと・まさたか) 昭和43年、名古屋市出身。板谷進九段門下で昭和55年にプロ棋士養成機関「奨励会」入会。平成2年、プロの四段に昇段。24年に当時小学4年生だった藤井聡太七段が弟子入り。昨年3月、王将戦での師弟対決が話題となった。今年2~3月、順位戦C級1組で師弟がB級2組へ同時昇級するかどうかが注目されたが、杉本八段が昇級、藤井七段は残留となった。