今、日本一有名な「師匠」と言ってもいいだろう。将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(16)の師匠、杉本昌隆八段(50)。類いまれな才能を持つまな弟子は次々と記録を塗り替え、ときには師匠を抜き去る。昨年5月には弟子と師匠が「七段」で並んだ。しかし2月、師匠が八段に昇段。そのときのコメントも「いつ抜かれるか楽しみです」とふるっている。将棋への情熱と、弟子に真摯(しんし)に接する姿勢、その人柄は棋界を超えて共感を呼んでいる。(聞き手・中島高幸)
--平成29(2017)年、藤井聡太七段は、デビューから29連勝の大記録を打ち立て将棋界が盛り上がりました。師匠の杉本八段も大変だったでしょう
杉本 あらゆるメディアから取材の電話がありました。電話が鳴れば藤井に関する取材。自分への用事は、まったくなかったですね。
--師弟関係も注目されています
杉本 将棋界の師弟関係は独特です。先生と生徒、親子のような。年に1回も会わない師弟もいれば頻繁に将棋を指す関係もあってさまざまですが、共通するのは無償の関係です。
--師匠にメリットはないですか
杉本 目にみえるメリットはないです。弟子にとっても微妙でしょう。師匠にかわいがられてもプロになれるわけでなく、本人が切り開かなければなりませんからね。
--講演もよくされておられます
杉本 この1年くらいですね。去年、藤井七段と師弟対局した後ぐらいじゃないでしょうか。将棋界自体のことに関心がもたれているので、内容は、将棋界や藤井七段のことであったり、上司と部下や、お子さんとの接し方とか。
--お二人の関係から、そういうヒントを得たいのでしょう
杉本 みなさんのお役に立ってるかはまったくわからないのですが。将棋界でいい上司というのは、たくさん棋士を育てている人です。藤井のような抜きんでた人を一人育てるのでなく、プロになれるかどうか境界線の人を引っ張り上げている師匠が名師匠ではないかと思います。
--昨年3月の王将戦での師弟対決は印象的でした