朝晴れエッセー

迷彩色のセーター・4月22日

「物をだだくさに使っちゃかんで」。子供の頃、祖母と母からいやになるほど聞かされた言葉です。だだくさとは名古屋弁でむやみにとか無駄にとかいう意味だそうな。その口癖どおり彼女らの節約精神は徹底していました。

まず、普段使いのふとん。敷布には花柄や水玉柄ではなく稲穂のマークに「○○農協」のロゴがあって。言わずと知れた米の空き袋です。肌にチクチクとして寝苦しかったことを覚えています。座布団カバーに至っては鯉(こい)のぼりのお古。跡取りの弟には親戚(しんせき)から十数組の鯉のぼりが贈られていて、その色あせたのを再利用したモノです。身につけるものはほぼ母のお手製。セーターはもとより帽子、靴下に至るまで何でも毛糸を編んでこしらえていました。

ただコレには問題が。1回目は同じ色の毛糸で編むからいいのですが、すり切れて穴があいたりするとほどいて別の色を足すのです。3度目、4度目の編み直しとなると何色もの余り毛糸が寄せ集まった迷彩色のセーターに。いくらなんでもこれはないでしょう、と文句を言うと「色なんかどうでもぬくときゃええがや」。

節約のおかげで姉弟3人とも私立の大学に通わせてもらうことができました。それはまあしみじみ感謝、しているのですが、やっぱりあのセーターは恥ずかしかったぞ、お母ちゃん。母の死後、納戸にしまい込まれていた古毛糸の束を片付けながらそう思い返しています。

清水 奈緒美 62 主婦 愛知県日進市