環球異見

アサンジ容疑者逮捕 米紙「報道の自由の英雄ではない」/露紙「立場逆なら称賛していた米国」

 ロシアのペスコフ大統領報道官は12日、アサンジ容疑者が逮捕されたことについて「独立した情報機関が脅迫にさらされている。逮捕は報道の自由に反す」と述べ、英当局や身柄引き渡しを求めている米国を批判。露上院のクリモフ国際問題副委員長も「暴露された側による復讐(ふくしゅう)だ」などと評した。捜査で同容疑者とロシアの関係が明らかになればロシアに対する国際的非難や制裁圧力が強まるのは確実だ。ロシア側の批判の背景には、そうした危惧があるとみられる。

 一方、露メディアではプーチン政権に近いものも含めて、表立った英米批判は見られない。露メディアには現在、政府が強めるメディア統制への懸念や反発が広がっており、言論の自由を根拠とした露政府の主張を冷ややかに見ているようだ。

 実際、リベラル系電子新聞「ガゼータ・ルー」は15日、著名な政治評論家、ボフト氏の論評を掲載。同氏は「同じ人々が、ある時は数千のサイトを疑わしい根拠で閉鎖させ、ある時は言論の自由のために戦っている」と政府を揶揄(やゆ)し、「言論の自由は、体制の支持者が認める限りで存在する」と指摘した。

 ただ同氏は、もしアサンジ容疑者がロシアに不利な情報を暴いていたなら、それがサイバー攻撃の結果であっても米国は称賛していたはずだ-との見方も示した。「今、『言論の自由』について語られる場合、常に確認すべきなのは、それが誰の利益に基づいているのかということだ」とし、権力や状況に左右されない絶対的な言論の自由などは幻想だとも述べている。(モスクワ 小野田雄一)

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