社説は「公開された政府の機密文書の多くが報道する価値のあるもの」だったと認めたが、「ウィキリークスは情報を公にするだけで、自主的に事実かどうかの確認をしたり、(情報で)名指しされた個人にコメントする機会を与えようとしなかった」と、報道上で欠かせない手順、配慮の欠如を指摘した。
一方で、両紙は報道・表現の自由の観点からも問題を提起している。ワシントン・ポストは「たとえジャーナリズムではないとしても、アサンジ容疑者の事案は表現の自由の問題と関連する可能性がある」とし、ウォールストリート・ジャーナルは「機密情報を公開したことだけが起訴の理由となっていれば、将来ジャーナリストに対して適用される(悪しき)先例を作る恐れがあった」と指摘した。
米公共ラジオNPRの番組では、ワシントン・ポストのメディアコラムニスト、マーガレット・サリバン氏が「アサンジ容疑者をジャーナリストと見なしていない」と非難したうえで、同容疑者が情報源を隠そうとしたことが罪とみなされるようになれば「われわれは大変な危機に陥る」と懸念を表明した。
これに対して、米中央情報局(CIA)の元副長官、ジョン・マクラフリン氏は同番組で、「ジャーナリストは、(情報源の秘匿など)合法的に行われたことで起訴、逮捕されるべきではない」とし、アサンジ容疑者が罪に問われる理由は言論の自由の問題とは異なるものであると訴えた。(ワシントン 住井亨介)
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ロシア・ガゼータ・ルー「立場逆なら称賛していた米国」
アサンジ容疑者の逮捕について、ロシアは「報道の自由の侵害だ」などと英国や米国を批判している。ロシアは2016年の米国大統領選干渉疑惑でアサンジ氏との共謀が指摘されており、捜査で新たな事実が判明すれば、さらなる対米関係の悪化や国際的非難を招く事態は避けられない。ただ、専門家は「国内の言論統制を強めるロシアに逮捕を批判する資格は乏しい」とも指摘している。