環球異見

アサンジ容疑者逮捕 米紙「報道の自由の英雄ではない」/露紙「立場逆なら称賛していた米国」

 ロンドンのエクアドル大使館に2012年6月から籠城していた内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジ容疑者が11日、英当局に逮捕された。身柄引き渡しを求める米国のメディアは、同容疑者の姿勢を「ジャーナリズムではない」と糾弾。一方、共謀が疑われているロシアの高官は「逮捕は報道の自由に反する」と英米を批判しているが、露メディアの見方は露政府の主張に冷ややかだ。

米国・ワシントン・ポスト「報道の自由の英雄ではない」

 英国で逮捕された内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジ容疑者について、米紙ウォールストリート・ジャーナルは12日付の社説で、「ジュリアン・アサンジ容疑者は、過去10年にわたって米国の国益を大きく損なってきた」と批判した。

 2010年に米陸軍兵が持ち出した米政府の機密文書をウィキリークスで暴露し、16年の米大統領選では、ロシア情報機関がサイバー攻撃で入手したとされる民主党候補だったクリントン元国務長官の陣営幹部のメールをウィキリークスで大量に公開したとして、米当局はアサンジ容疑者の身柄引き渡しを要求してきた。

 10年の事件は「米史上最大級の機密漏洩(ろうえい)」(米司法省)とされ、陸軍兵と共謀して米政府のコンピューターシステムに侵入したとして連邦大陪審がアサンジ容疑者を起訴した。

 起訴状によると、持ち出された情報はアフガニスタン戦争関連が約9万件、イラク戦争関連40万件、国務省の公電25万件に上る。ウォールストリート・ジャーナルの社説は「罪状が真実だとすれば」と断りつつ、「情報源を幇助(ほうじょ)して政府のデータベースへ不法侵入させるのは、まっとうなジャーナリズムではない」と主張した。

 「ジュリアン・アサンジは報道の自由の英雄ではない」との見出しを掲げた12日付の米紙ワシントン・ポスト社説も、ウィキリークスによる情報暴露がジャーナリズムとは相いれないものだとの認識を示した。

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