夏の参院選の前哨戦と位置付けられた衆院大阪12区、沖縄3区の両補欠選挙は、自民党の2敗で終わった。
地方には地方の選挙区事情があろう。だが、自民系候補を擁立した衆参補選で8連勝中だっただけに政権与党が足踏みした印象は拭えない。「安倍1強」という長期政権のおごりと緩みが敗北を招いたと受け止めるべきである。
参院選はもとより、新天皇即位、改元、日本が議長国として6月下旬に大阪で開く20カ国・地域(G20)サミットなど、政権が取り組むべき重要日程が続く。
国内外で強い発信力を示す絶好の機会を生かすためには、安定した政権基盤が欠かせない。自民党総裁でもある安倍晋三首相には党内のタガを締め直す強い指導力が求められる。
大阪は死去した議員の「弔い合戦」だった。本来なら勝って当たり前の戦いに負けた。大阪府知事・市長のダブル選に続く敗北は安倍政権にとって痛手だ。ダブル選でのなりふり構わぬ戦いぶりが、有権者の政党不信を募らせたことはなかったか。
自民はダブル選に際し、国政で激しく対決する立憲民主党や共産党とも共闘した。その舌の根も乾かぬうちに、補選では自分のところだけに票を入れてくれと言うようでは、虫が良すぎる。
野党も同じだ。かつて「唯一の野党」を掲げた共産党系の現職候補が無党派層の票欲しさに無所属で立候補した。有権者無視とみられてもやむを得まい。こうした姿勢も共産党退潮の一因だろう。
沖縄は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の問題が最大の争点となった。移設に反対する社民、共産両党など県内の首長選で3連勝している「オール沖縄」の勢いが勝った。与党は普天間飛行場の危険を除去するためにも、辺野古移設が重要であることを丁寧に説明していく必要がある。
先に塚田一郎元国土交通副大臣と桜田義孝前五輪相が問題発言で立て続けに事実上更迭された。自民敗北はその影響もあろう。更迭劇が起きること自体が政権の緩みを象徴している。
政党が、党利党略でしか動けないようでは国民の支持を得られまい。安倍政権には憲法改正をはじめとした自民党の立党精神に立ち返り、正面からこの国のあり方を問う姿勢こそが求められる。