朝晴れエッセー

思いを伝える・4月21日

娘がこの春、音楽高校を無事卒業した。その後行われた謝恩会のそれぞれの席にはサプライズとして子供から親へ、親から子供へのメッセージカードが置かれていた。

娘は14歳のとき父親をガンで亡くした。私は52歳で未亡人になるはめになった。3人家族で穏やかな生活が続くはずだった。ガン発覚から亡くなるまでの時間はたった2カ月。末期の膵臓(すいぞう)がんだった。突然大きな痛みにも似た悲しみが私たちを襲った。

その頃から娘の反抗期もあいまって私との衝突が絶え間なく、お互い疲弊(ひへい)し笑顔のない毎日になった。それでも希望の高校に進学し進路もその道の大学に決まった。私は肩の荷が少し軽くなるのを感じた。

そんな折の謝恩会。愛する夫を失った喪失感から自分自身を立て直すことができず、反抗の裏の甘えたい娘の気持ちを察してやれず、日々やり過ごしてしまった。そのことを申し訳なく思っている、と娘にわびるメッセージカードを書いた。

娘からは、反抗ばかりしてごめんなさい、これからは、しっかりとした大人になる!! と書かれてあった。

うれしかった。

母親ではあるけれど、いつも強い大人ではいられない。子供ではあるけれど、どんな大人になるべきかちゃんと自覚している。思いを伝える、お互いを認め合う、家族だからこそできないことの方が多い。けれど伝えなければ、そこにある愛を見失う。そう実感した私にも、春が来た。

川岸 愛子 56 専業主婦 大阪府枚方市