史上最多の33競技339種目が行われる2020年東京五輪の競技日程が決まった。
五輪相の失言辞任をはじめ残念な話題ばかりが続いたが、この機に組織委員会は大会への期待醸成を工夫し、一人でも多く競技会場で観戦できるよう、チケット販売などの情報提供にも努めてもらいたい。
来年7月24日の開会式に続き、25日からは柔道や体操などが始まる。後半には陸上、レスリングなども控えている。閉幕する8月9日にかけて連日、日本勢のメダル獲得が期待できる構成だ。
世界最速を決める陸上男子100メートルの決勝は、8月2日夜となった。レスリング女子57キロ級の伊調馨が代表権を得れば、8月6日夜に史上初の5連覇達成を見られるかもしれない。
日本選手団をはじめ各国の有力選手がいつ、どの種目に出場するのか。一人一人がお好みの観戦スケジュールを組んでおくのも、五輪を楽しむコツだろう。
チケットの抽選申し込みは5月から始まる。ネット上での事前登録が必要となり、高齢者には分かりにくいとの声もある。丁寧な情報提供を望みたい。
暑さ対策も急ぐ必要がある。マラソンはスタート時間を予定から1時間繰り上げ午前6時とした。妥当な判断だろう。運営スタッフやボランティア、観戦者の利便性を考えれば、公共交通機関との連携も不可欠だ。
観客のチケットを確認する地点での、行列を減らす工夫や休憩所の情報は、海外から訪れる観客にも周知してほしい。
残念なのは、競泳の全種目と陸上の9種目が午前決勝となったことだ。選手強化の現場には記録への影響を懸念する声もあり、「五輪は誰のものか」という問いを投げ掛けてもいる。
子供や大人がひと息ついた時間に、競技会場やテレビなどでゆっくり観戦できるのが、あるべき自国開催五輪の姿だろう。
米国のテレビ局による巨額の放映権料が五輪を支えるのは事実だが、国際オリンピック委員会(IOC)が米国との時差に過度の譲歩を示すほど「選手第一」の理念から実像がかけ離れてゆく。
五輪の価値を高めるのは記録であり、感動の記憶だ。肥大化する五輪のツケを選手が払う構図は好ましくない。