一聞百見

伝説のツアマネが語る/ロックスターと駆けた半世紀/ウドー音楽事務所代表取締役 高橋辰雄さん(66)

■友情から生まれた夢舞台

最近はインターネットの普及で海外とのビジネスが激変しているが、高橋さんは過信しない。「電子メールでのやり取りは単なる結果報告になりがち。意見のキャッチボールやビジネス上の駆け引きはできないですからね」。実際、夢のようなステージが実現したことも。平成3(1991)年エリック・クラプトンと元ビートルズのジョージ・ハリスンによるジョイント公演だ。

ビートルズ解散後、ジョージはのどの不調を押して初めて行った全米ツアーが酷評され意気消沈。以降、ツアーをしなくなっていた。「クラプトンは、ステージから遠ざかっている旧友のジョージが『寂しがっているんじゃないかな』と慮(おもんぱか)り、一緒にライブをしようと。その際『治安も対応も良く、ウドー(音楽事務所)でタック(高橋さん)が仕切る日本なら大丈夫』と話が進んだんです」。ジョージにとって17年ぶりの晴れ舞台。ところが公演が行われたのはなんと日本だけだった。世界中の音楽プロモーターが羨(うらや)んだ。

千秋楽の翌日。ジョージはホテルの部屋で高橋さんに謝辞を述べ、小さなメッセージブックを手渡した。そこには金色の文字で「タックへ。あなたの助けと友情に感謝します」と書かれていた。今も大切な宝物だ。クラプトンとは今も友情を深めている。

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