伝説の英バンド、クイーンの雄姿を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒット。青春時代を思い出し、胸を熱くした人も多いだろう。そんな世界的スターを、早くから日本に招聘(しょうへい)してきた伝説のツアーマネジャーがいる。老舗音楽プロモーター「ウドー音楽事務所」(東京都)の代表取締役、高橋辰雄さん(66)。スターとともに駆け抜けた半世紀を聞いた。(聞き手 岡田敏一)
■始まりはツェッペリン
3月、東京の有楽町マルイにロックファンが大勢詰めかけて話題になった。平成29(2017)年に創立50周年を迎えたウドー音楽事務所が、記念の展覧会「海外アーティスト招聘の軌跡」を開催。エリック・クラプトンやジェフ・ベックが使ったエレキギターなど、約200点を展示、ファンは往時を懐かしんだ。
そんな世界的なスターの公演が日本で気軽に楽しめるようになったのは同社のおかげだ。その招聘業務の現場を仕切る中心人物が高橋さん。多くのロックスターから「タック」の愛称で呼ばれ、彼らが全幅の信頼を置く伝説のツアーマネジャーだ。
人生を変えたのは一つのライブ。昭和47(1972)年10月、同社が招いたレッド・ツェッペリンの2度目の来日公演で「たまたま日本武道館で警備員のアルバイトをしていて洋楽ロックのライブのすごさに感動したんです」。その迫力に衝撃を受け「この体験を多くの人々に届けたい」と思うようになった。
「早速、昭和50年から正社員としてツアーマネジャーを始めました。当時はまだそんな職種はなかったのですが…」。仕事に将来性を見いだしたが、24時間態勢でスターのわがままに付き合うという大変な側面も。その話はロックスターの成功物語よりもすごかった…。
■相手優先クラプトンに感銘
「スターは大体『ミー・ファースト(自分優先)』。ところが彼は『ユー・ファースト(相手優先)』。お茶の飲み方や箸(はし)の持ち方を学ぼうとするなど、相手の国の文化やマナーを尊重しました。謙虚で日本人的な奥ゆかしさもある。本当に尊敬できる人物です」。彼というのは、ギターの神様と呼ばれたエリック・クラプトン。そのライブに関わり、仕事への取り組み方が変わったという。