「人間中心設計」から「人を守る設計」へ
ザッカーバーグは18年1月、その年の自己目標として「Facebookで過ごす時間を『有意義な時間』にする」と宣言した[日本語版記事]。17年第4四半期にユーザーがFacebookで過ごす時間が短くなったことを受け、投資家をなだめるための発言だった。
その後、FacebookとInstagramはそれぞれ独自の時間管理ツールを発表した。このツールには、アプリの使用時間がわかる棒グラフや、最長8時間までプッシュ通知を無音にできる選択肢などが含まれていた。
しかし、変わったのはそこだけだ。Facebookの利用時間は追跡できるものの、絶え間ない通知(「○○さんが今日近くで開催予定のイベントに興味があると言っています」など)や、スクロールを続けさせるために設計された無数の機能をかわさなければならないことに変わりはない。
Instagramは相変わらず「FOMO(見逃すことの恐怖)」を量産しており、18年に入ってから「ログイン中」の表示や長編動画のプラットフォームが追加された。これらのどこが「有意義な時間」に配慮しているのだろう。
Center for Humane Technologyをハリスと共同で立ち上げたエイザ・ラスキンは18年5月、「単なる人間中心設計から、人を守る設計に移行しなければなりません」とツイートした。
「『問題があるって? 違う使い方をするのはあなたの責任です』というこれまでの態度から、『テクノロジーを、人々を守る方向で設計するのはわたしたちの責任です』へと」(ラスキンに取材を申し込んだが、回答を得られなかった。ラスキンは現在、中央アフリカ共和国でマルミミゾウのコミュニティーを研究しながら「有意義な時間」を実践している)。
「有意義な時間」を支配するのは誰か?
テック企業の積極的な動きが何か意義をもつとすれば、それはスマートフォンをなかなか手放せないユーザーの苦悩を企業たちが認めたことだろう。
フリップド(Flipd)の共同創業者兼最高マーケティング責任者(CMO)を務めるアランナ・ハーヴェイは、18年を「ターニング・ポイントの年」と呼んだ。フリップドはスマートフォンの使用時間を減らすよう人々を促すアプリを提供している。
一方、スタートアップにとって、18年は悲惨な1年だった考えるアプリ開発者もいる。注意散漫を防ぐためのミニマルなAndroid向けランチャー「Siempo」を開発するアンドリュー・ダンは、18年に入って資金調達が困難になったと話す。「アップルやグーグルが消費者のニーズを完全に満たすだろうという認識」が存在するためだ。