浪速風

桜にあの人を思い出す

桜が散る。だからこの週末も、桜について書かせていただきたい。年を重ねて、花が咲くと、亡くなった人を思い出すことが多くなった。また咲いたよ、一緒に見たかったな。青空を背景に清楚(せいそ)に輝く花を見上げていると、ふっとそんな思いが空に走る。

▶あることがきっかけで、今年は若くして亡くなった友人を思い返すことが多かった。阪神大震災の被災地で一緒に仕事をした。これは記憶の連なりにすぎないのだが、被災地の桜といえば、まだ花が咲く前、小さい公園にできた仮設住宅にかかるように枝を広げていた木の冬芽を思い出す。痛手を負った人たちがひっそりと、懸命に生きていた。

▶友人は精神科医として、被災者の心の傷つきにやはり懸命に向き合っていた。夭逝(ようせい)はおそらく働き過ぎが原因である。彼が手探りで体得していった手法は「心のケア」として開花した。今もどこかで、彼が残したものはささやかだけれど美しい花を咲かせているだろうと思う。