浪速風

千円札のバトンタッチは幻のノーベル賞

人類の歴史は病魔との闘いであった。とくに中世、ヨーロッパで大流行した黒死病(ペスト)などの伝染病、感染症は恐怖の的だった。そうした人類の敵にようやく勝利し始めたのは、19世紀末から20世紀初頭にかけての細菌学の急速な進歩によってである。英雄たちの列に北里柴三郎がいる。

▶不可能とされた破傷風菌の純粋培養に成功し、さらに菌体を少量ずつ動物に注射しながら血清中に抗体を作り出す画期的な「血清療法」を開発した。1901年の第1回ノーベル医学・生理学賞はドイツの細菌学者、ベーリングに授与されたが、ジフテリアの血清療法という業績は北里との共同研究だった。

▶現在なら共同受賞であろう。が、創設されたばかりで複数を選ぶ発想はなく、欧米中心でもあった。北里に師事した野口英世が、日本人初のノーベル賞を目指して研究に打ち込んだのはよく知られる。その野口の後任として、新しい千円札の肖像に北里が選ばれた。