一聞百見

着物に懸けた 噂のインスタ美女 川原マリアさん(32)/着物デザイナー(図案家) MICO PARADE(ミコパレード)社長

修業生活は厳しかった。図案の仕事はおもしろかったが、弟子の生活は基本的に無給で貯金を取り崩す毎日。その中で、着物を着て自分で撮った写真を会員制交流サイト(SNS)に投稿し始める。和洋にこだわらない斬新な着こなしは注目を集めた。

「新しいとかおしゃれとか言ってくださるんですが、本当はお金がなかったからなんです」。古着は安く買えても小物までは手が回らなかった。そこで草履の代わりにブーツをはき、帯締めはベルトで代用、襦袢(じゅばん)の代わりにセーターやシャツを着た。そんな川原さんに平成26(2014)年JR東海のキャンペーン「そうだ京都、行こう。」のモデルにと声がかかる。

それからは修業とモデルの二足のわらじ。金銭的にも体力・精神的にも限界が来ていた。着物の需要も減る一方で「着物って必要なの?」と思い、注目され始めていたクラウドファンディングに挑戦。インターネットで自身の活動を紹介して資金を募り、着物文化が存続の危機にあると訴えた。成功して資金が集まり、着物には可能性があると確信する。

図案を教わった修業先には感謝していたが、業界全体を見渡せる位置で学び直したいと転職。平成29年、念願のオリジナルブランド「MICO PARADE(ミコパレード)」を立ち上げた。「正統な着物が白米なら私の提案はふりかけみたいなもの。おもしろそうと思って一口、着物の世界に入ってくれれば」

■もっと自由に、もっとおしゃれに

「大好き!」「応援してます」。川原さんの限定ショップやトークイベントには大勢のファンが詰めかける。一方で、従来の和装のイメージを大きく変えるとがった存在の川原さんには批判もあった。

着物は扱いやすいポリエステル。デザインも現代風だが、よく見ると「和柄」をアレンジした作品が多い。「古典を学びましたから。古典だからこそできる表現というのもあります」。ところが、肝心の着物の需要が先細って久しく、市場は約30年で6分の1に激減した。

「そもそも着物って高いし面倒だし、何も知らずに着るのも怖い。そんな子たちにいいよいいよそんなの、素人なんだからといってあげたい」。着物を自由に、おしゃれにまとう川原さん独特のファッション。最近はマリア流としてあこがれる女性が増えた。川原さんは「着物をファッションとして立ち返らせることができなければ未来はない」という。今最も危機を感じているのは和装文化を支える京都の職人が消えつつあることだ。「もうできない技術もある。瀕死(ひんし)の状態なんです。でも、今ならまだ間に合う」。