新聞に喝!

入管法改正、メディアの警鐘は不十分 ブロガー・投資家 山本一郎

ワインの検品作業をする外国人従業員ら=大阪市西淀川区(須谷友郁撮影)
ワインの検品作業をする外国人従業員ら=大阪市西淀川区(須谷友郁撮影)

4月1日、改正入管法が施行されました。少子高齢化に伴う労働力の不足を見込んで海外からの人材が日本で働きやすいようにするため、いままで認められてこなかった単純労働者の在留資格を認めるものですが、かねてより「移民法だ」と慎重な声も多かった内容です。産経新聞でも1日付「主張」欄で「改正入管法施行 抜本的見直しを躊躇(ためら)うな」として定期的な見直しについて提言するほか、現場での混乱を「【ビジネスの裏側】仕組み複雑、早くも機能不全か 外国人材拡大」(「産経ニュース」4日)で詳述しています。

一方、わが国では働き方改革の名の下、ブラック企業対策や超過時間労働に対する規制・監視強化も進む中、一層の労働力逼迫(ひっぱく)が問題になりつつあります。本来、労働力不足なら労働者の給与は上昇していかざるを得ないはずですが、ここで改正入管法によって低賃金で働いてくれる外国人の単純労働者が増えてしまうと、日本人の低所得層は外国人労働者との競争にさらされ、いつまでも安い賃金しかもらえないことになります。

少子化の根本は婚姻数・割合の減少であり、若い人の結婚できない理由のひとつが低賃金など経済力への不安であることを考えると、少子化で労働力が減ったとして海外から労働者を入れればより低賃金方向へ圧力がかかり、若い人がさらなる低賃金にあえぐことになって結婚にこぎ着けることができず、少子化がさらに進みかねないというのが実態です。いま産業界の要請で外国人の受け入れを拡大するのは、現在苦しいので未来での収穫に必要な種籾を食べ尽くすのと同義のようにも見えます。明らかにメディアでの警鐘の鳴らし方は不足していたと言わざるを得ません。

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