朝晴れエッセー

銭湯へ行こう・4月7日

色気があって大変美しいと思うのが、桶(おけ)で汲(く)んだ湯を座って肩からかけるしぐさだ。つくづく見とれてしまう。

しかし残念なことに、最近はめったにお目にかかれない。それどころか立ったままでかかり湯をする。水しぶきが人にかかることなどお構いなしに勢いよく浴びる。

湯船に入るときも同じだ。浸かっている人に気づかれないぐらい、湯を揺らさずにそっと入ってほしい。少し体を斜めにして恥じらいをもって入るとより美しい。勢いよく入ってこられるとおぼれそうになる。

一人ずつ仕切られた洗い場や大きな湯船がある施設が増えて、気遣いをする機会がなくなってきたのだろう。人に話しかけられる雰囲気ではないので、注意もできなくなった。

私は小さな銭湯が好きだ。旅先で湯につかりながらの会話は格別に楽しい。見慣れない私はかなりの確率で常連さんに話しかけられ、聞く方言が遠くへ来たことを感じさせる。脱衣場や洗い場などの掲示物で地域の様子を感じることができるし、建物の造りを見てもさまざまでおもしろい。湯めぐりを重ねるうちに、桶を持って歩く人の後をつけて、路地裏の銭湯を探し当てる特技も身につけた。

スーパー銭湯が増え、街の銭湯が少なくなると同時に、日常の何気ない会話の場も失われていくようで残念だ。昔のように、どこの家でもちょっと歩いていけば入れる銭湯が増えてくれたらいいなと思う。

春名 恵子 60 兵庫県西宮市