名作上映10年「午前十時の映画祭」 公益目的…値上げできず終幕

名作上映10年「午前十時の映画祭」 公益目的…値上げできず終幕
名作上映10年「午前十時の映画祭」 公益目的…値上げできず終幕
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 ■経費増加で運営困難に

 スクリーンで映画を見る魅力を伝えようと過去の名作を全国の劇場で上映し、幅広い層に支持された企画「午前十時の映画祭」が、第10回を最後に10年間の歴史に幕を下ろす。同映画祭事務局では「一定の役割を終えた。経費増加で運営が困難になったことも理由の一つ。残念だが仕方がない」としている。

 「午前十時の映画祭」フィナーレとなる第10回は、5日から東京・TOHOシネマズ新宿、大阪ステーションシティシネマなど全国58館で始まる(来年3月26日まで)。スティーブン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1977年)のファイナルカット版など計27本が上映される。

 同映画祭は洋画の興行不振が続いていた平成22年、洋画の若いファンを増やすことを目的に映画演劇文化協会の主催で始まった。第1回は計50本を週替わりで上映。「ローマの休日」(米、53年)や「アラビアのロレンス」(英、62年)などの名作が名を連ねた。

 第1回は25館で開催。入場料は一般1000円(現在1100円)と低めに設定されたこともあって、予想(年間十数万人)を大きく超える約58万人を動員した。翌23年は倍の50館に増やし約86万人の大幅増。しかし、24年にはデジタル化による劇場の改修が相次いだことから公開規模を再び25館に。第4回の25年には42館に増やし、以降は50館超の公開規模で開催。毎年30万~50万人が足を運び、第8回までに計約398万人を動員した。

 安定した人気だったが、映画祭の維持は苦しかった。平成29年度の事業報告などによると、同映画祭では興行収入を5億円と見込んでいたが、決算は4億4824万円。支出は決算ベースで配給会社への支出が2億4424万円、劇場使用料は1億7929万円、宣伝費など諸経費は1億7803万円で計6億156万円。1億156万円の赤字だった。

 事務局は「収入の大半が配給会社と劇場に分配され、こちらにはほぼ残らない仕組みだった」と説明。「旧作より動員が見込める新作を上映したい劇場や手間を嫌う配給会社などにお願いして実行していた。宣伝費もこちらが負担し、毎回1億円以上かかった。ファンの声に押されて続けてきたのが実情」と明かす。

 さらに23~25年ごろからは高額なデジタル上映機器のリース代の負担も求められた。事務局は「公益目的なので値上げもなじまない。第10回を区切りとした」と無念そうに語る。

 作品の選定委員を長く務めた映画パーソナリティーの襟川クロさんは「寂しいが、大スクリーンで名作を鑑賞する醍醐味(だいごみ)を伝えられた。時代に一石を投じたと思う」と意義を強調した。

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