主張

塚田氏の忖度発言 首相は罷免をためらうな

 開いた口がふさがらない。塚田一郎国土交通副大臣による忖度(そんたく)発言のことである。

 政治家の出処進退は本来自ら決めるべき事柄だが、発言は行政の公正性に関わる。撤回すれば済む問題ではなかろう。

 塚田氏は3日、「事実と異なる発言で多くの皆さまに大変なご迷惑をおかけした」と、発言を撤回して謝罪した。4日の参院決算委員会では、発言翌日の報道で間違いを認識したと釈明した。副大臣にとどまるつもりのようだが、事の善悪が分からなかったとは驚く。

 してもいない安倍晋三首相らへの忖度に言及して地元への利益誘導をひけらかす。副大臣を務めるに値しないのは、誰の目にも明らかではないか。

 安倍首相は4日、「事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と答弁した。ならば、塚田氏を罷免するのが筋だ。

 忖度発言が出たのは1日の北九州市で開かれた集会だ。塚田氏は山口県下関市と北九州市を結ぶ関門新ルート(下関北九州道路)の国直轄調査への移行に関し「安倍首相や麻生太郎副総理が言えないので私が忖度した」と語った。

 野党が副大臣辞任を求めたのは当然である。

 参院議員の塚田氏は、自民党麻生派の所属でもある。首相の地元下関市と麻生氏の地元福岡県を結ぶ道路整備で便宜を図ったと誤解されかねない。

 7日投開票の福岡県知事選の自民党推薦候補を応援する集会での発言だ。自らの影響力を誇示して、選挙を有利に運ぶ思惑はなかったか。それとも単なる受け狙いか。いずれにせよ、お粗末な話である。

 地元では、共産党など一部を除き関門新ルートの建設を望む声が強い。

 同ルートの建設計画は、無駄な公共事業だとして平成20年に凍結された。昨夏の西日本豪雨で関門橋と関門国道トンネル両方が通行止めとなり、生活必需品の流通に多大な支障が出た。これを機に、31年度予算に国直轄の調査費4千万円が計上された経緯がある。忖度があったとは考えにくい。

 安定した政権運営にとって肝心なことは、不適格性を示した内閣の一員をいたずらにかばうことではない。安倍首相は、行政の公正性を示すためにも浅慮に過ぎる副大臣は退場させたほうがよい。

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