主張

台湾海峡情勢 中国は危険な挑発やめよ

 中国軍の殲(せん)(J)11戦闘機2機が台湾海峡の中間線を東に越境した。

 中台の実質的な停戦ラインの侵犯である。台湾軍は戦闘機の緊急発進など迎撃態勢を取らざるを得なかった。

 狭い海峡上空での挑発は、偶発紛争すら招きかねない。中国の危険な行動を強く非難する。

 国共内戦の延長線上に台湾を位置づけることで、中国はこれまでも台湾周辺で武力威嚇を繰り返してきた。1996年の台湾総統選に合わせた中国によるミサイル演習は、台湾海峡にとどまらず、地域全体の緊張を高めた。

 今回の挑発は、台湾の蔡英文総統の対米外交を牽制(けんせい)したものだろう。蔡氏は南太平洋諸国の歴訪中、米ハワイ州で現役の米軍将官と会談した。インターネット回線経由でワシントンのシンクタンクに向けても講演した。

 講演で蔡氏は、習近平政権が軍事圧力を伴って「一国二制度」の受け入れを迫る現状を踏まえ、「台湾軍の強化」を訴えた。台湾海峡の現状に照らせば指導者として当然の発言である。

 もちろん、中国の視野には来年1月の台湾総統選が入っている。再選をめざす蔡氏をにらんだ軍事行動は、民主的な選挙制度を揺さぶる暴挙にほかならない。

 蔡氏と同じ与党民主進歩党(民進党)では、「台湾独立」をより鮮明に主張する前行政院長(首相に相当)も総統選をめざす。他方、最大野党の中国国民党で出馬が取り沙汰される高雄市長の訪中を中国は厚遇で迎えた。

 飴(あめ)と鞭(むち)を交えた台湾への政治介入は、中国の常套(じょうとう)手段である。中国の総統選への介入に警戒を強める必要がある。

 地域に目を広げれば、東シナ海の日中中間線付近でも、中国は新たなガス田試掘の動きを昨年から強めた。台湾海峡情勢は、軍事力を背にした中国の海洋進出と密接にかかわる。

 台湾を含む地域の安全に責務を持つ米国の対応は、とりわけ重要だ。米軍艦艇が今年に入り毎月台湾海峡を通過している事実は、この地域で中国の暴挙を許さない意思の表れとして歓迎したい。

 こうした地域情勢を前に、米台と自由と民主主義という共通の価値観を有する日本が無策でいることは許されない。蔡氏が提案した安保対話を含め、実効的な地域の協力に踏み込むべきだろう。

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