皇后さまの「素顔」本に 絵本を通じ交流の末盛千枝子さん

国際児童図書評議会の式典に臨席された皇后さまと、末盛千枝子さん(右)=2002年、スイス・バーゼル市
国際児童図書評議会の式典に臨席された皇后さまと、末盛千枝子さん(右)=2002年、スイス・バーゼル市

 天皇陛下の譲位まで1カ月を迎える中、絵本を通じて皇后さまと親交の深い絵本編集者、末盛千枝子さん(78)が思い出をつづった「根っこと翼 皇后美智子さまという存在の輝き」(新潮社)を出版した。著書では皇室に入った直後の思い出や、60年にわたり陛下を支えてこられた皇后さまの「素顔」を紹介。譲位を前に「寂しいような、感無量の思い」を込めた。

 陛下と皇后さまは昭和34年のご成婚直後、伊勢神宮(三重県伊勢市)に参拝に行かれた。皇后さまが電車で移動中、沿線の畑で女性が手を振る姿に気付かれた。少し離れたところで、同じように手を振る女性がいた。2人は互いの姿に気付き、今度は向かい合って優しく手を振り合った-。

 「皇室は静かに、柔らかく、何かの結び目のように存在しているのではないか。自分はどのようにあればよいか求めて生きていこうと思った」。皇后さまが最近、末盛さんに「忘れられない思い出」として語られた話だ。

 末盛さんは、皇后さまが英訳された詩人、まど・みちお氏の詩集の出版に携わるなどした縁で、皇后さまと25年近い交流を持つ。平成23年の東日本大震災の約1カ月後、岩手県に住む末盛さんは被災地を訪れ、児童に本を贈る活動を始めた。「もう被災地に入ったのね」。間もなく皇后さまから連絡があり、児童文学作家、新美南吉などお手元にある本十数冊が贈られてきた。「皇后さまはすぐにでも被災地へという思いがある一方、迷惑にならぬよう時期も見定められる。ご心配が募っていらしたのでしょう」(末盛さん)

 著書のタイトルは1998年、インドで開かれた国際児童図書評議会での皇后さまのビデオメッセージから引用した。皇后さまはこの中で、読書について「ある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました」とご回想。「人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても。国と国との関係においても」とも述べられた。

 「伝統の継承とともに、慰霊や被災地訪問などで困難にある人に心を寄せる新しい皇室を作り上げてこられた。今は無事に陛下の譲位の日を迎えることが願いだろうが、以降はゆっくり過ごしていただきたい」。末盛さんはそう話した。