外国人の医療費未払い 病院の約2割が経験 総額9300万円

 日本を訪れている外国人患者を受け入れた病院の約2割が、医療費の未払いを経験していることが、27日公表された厚生労働省の調査で分かった。未払い総額は約9300万円となり、最大で約1422万円に上る病院もあった。東京五輪・パラリンピックを来年に控え、訪日外国人客はさらに増えるとみられ、厚労省は体制整備を進める。

 調査は昨秋から全国の8417病院を対象に実施。3980病院(約47%)が回答し、昨年10月の1カ月間に1965病院(約49%)が外国人患者を受け入れていた。中国籍が多かった。

 1965病院のうち、診療費を請求して1カ月経過しても全額が支払われない「未収金」を経験したのは372病院(18・9%)。未収金の件数は平均8・5件で、総額は平均42万3千円だった。

 出産前後の母子に高度な医療を提供する「周産期母子医療センター」に対する調査では、有効回答の4%に当たる10センター(平成29年度)で、訪日客の分娩(ぶんべん)を経験していた。

 分娩数はセンター当たり1~3件で、中には約130万円の費用が未収金になっているケースもあった。

 医療費の未払いは、病院の経営を圧迫しかねない。外国人が日本を出国してしまうと徴収は困難となり、未払い金を病院側が負担せざるを得ない。

 こうした状況を受け、政府は昨年6月、訪日客の医療費未払いに対する総合対策を公表。未払い歴のある訪日客には、再入国を拒否するなど厳格に対応する。外国人が旅行保険に未加入のまま来日するケースもあることなどから、入国前の保険加入も促す。また、医療費未払いの背景には医療情報の説明不足も指摘されており、言語の違いによるコミュニケーション不足解消に向けて「医療コーディネーターの養成」や「医療通訳の認定制度」の構築も盛り込まれた。

 訪日客に医療通訳料を請求している病院は少ないため、患者に請求可能であることを医療機関に周知していく意向も示している。

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