女性の役割、「r」の発音、北海道の色 主な検定意見と修正内容 教科書検定

文部科学省が公表した来年4月から小学校で使われる教科書の検定結果では、11教科164点の全教科書で計2658件の検定意見が付いた。教科書1点あたりの平均は16件で、内容の誤りだけでなく、社会情勢などを踏まえた意見も付された。

人権問題を学ぶ6年の社会。『女性については、子育てをしながら働きやすい環境づくりが、国や地方公共団体を中心に進められています』という文章に、「誤解する恐れがある」との検定意見が付いた。文部科学省によれば、子育てが女性のみの役割であるかのように読み取れるからだ。

初登場の英語では、「児童にとって理解し難い」などとする検定意見が相次いだ。日本人には難しいとされる「r」の発音について、『くちびるを前に出し、舌をまるめて』とした説明にも待ったがかかり、『舌先をどこにもつけないで』に修正された。

5年の国語では、『そぼくな和語では言い表せないむずかしい漢語』とする記述が、「和語と漢語の特質について誤解する」と指摘され、「そぼく」の表現を使わない記述に改められている。

安全への配慮を求める検定意見も少なくない。1、2年の生活で、輪ゴムを指で飛ばす遊びを紹介する写真に対しては、「必要な配慮を欠いている」と指摘。『人に むけて とばさない ように しようね』との注意書きが加えられ、検定をパスした。4年の理科でも、鉄道のレールのつなぎ目を説明する写真に同様の意見が付き、『あぶないので、線路の中に入ってはいけません』との文言が挿入された。

一方、6年の社会で、江戸時代初期の対外貿易などを学ぶページでは、日本を赤く塗った地図に検定意見が付いた結果、北海道を白くする修正がなされた。文科省の担当課では「当時は江戸幕府の支配が北海道に及んでおらず、児童が誤解する恐れがある」と説明。しかし幕府の支配領域だとする説明は地図にも本文にもなく、教科書をみた子供たちに、北海道は日本でないかのような印象を与えることになった。

北方領土が日本固有の領土であることをPRする内閣府のホームページには、江戸初期に松前藩が「北海道を支配していた」と書かれている。今回の検定は、こうした内閣府の見解とも矛盾することになり、今後議論を呼びそうだ。

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