浪速風

旅立つすべての人を祝福したい

春風はさわやかな別れの香りを含む。同時に出会いの予感もはらんでいる。学校を巣立ち、仕事に就く人も多かろう。職場を変わり、あるいは去っていく人もいよう。巡ってきたまろやかな春の光は、懐かしい思いとともに別れと出会いを優しく包んでいる。

▶俳人の与謝蕪村に「春風馬堤(ばてい)曲」がある。俳句や漢詩を連ねた一種の長詩といっていい。大阪の川の堤で郷里に向かう娘を見かけた。その娘を題材にして春の景色に懐旧の思いを重ねている。大阪は蕪村の故郷でもあった。「春風や堤長うして家遠し」「たんぽゝ花咲(さけ)り三々五々五々は黄に」

▶大阪の川ではないのだが、先日、郊外の野に出てみた。ナズナの小さい花に混じってツクシがかわいらしく頭を出し、たんぽぽも一つ二つ、花を咲かせている。命が芽吹く季節が巡ってくるように、別れがあれば出会いがある。旅立つすべての人の前途を祝福させていただきたい。「故郷春深し行々(ゆきゆき)て又行々(またゆきゆく)」