松本真由美の環境・エネルギーDiary

福島沖に浮かぶ発電設備、実証は継続

 一方、7メガワット風車は、稼働率16・4%、設備利用率3・7%(17年7月~18年6月)と、油圧システムの初期の不具合などで稼働率は低い水準にとどまりました。この実証機の規模は、海面から最高到達点までの高さが189メートル、翼の回転軸までの高さ105メートル、翼長81・7メートル、重量1700トンで、規模、出力とも世界最大です。ただ、油圧システムの課題が残り、現時点で商用運転の実現は困難なうえ、維持管理費も高額であることから、同委員会は撤去の準備を進めるべきだと判断しました。

 同委員会での検証結果と提言をもとに、国は、2メガワットと5メガワットの実証機について実証研究を19年度まで1年間延長し、発電システム全体の追加的なデータ取得や、さらなるコスト低減の促進、漁業共存策の検討などを行うことにしました。7メガワット実証機については、撤去工法の検討を行った後、21年度までに解体・撤去作業を終えることを見込んでいます。

 ■コストなど残る課題

 国内で商用運転している浮体式洋上風力発電システムでは、16年3月に長崎・五島列島で運転を始めた「崎山沖2メガワット浮体式洋上風力発電所」が先駆けです。環境省が11年度から5年間にわたって実施した実証事業を経て、事業化しました。18年9月には、北九州市の響灘地区で、日立造船や丸紅などがNEDOと共同で開発した浮体式の実証機が試運転を始め、浮体式の発電コストを30年に20円/キロワット時にすることを目指し技術実証を進めています。

 浮体式を普及させるには、高い建設コストが大きな課題の一つです。福島県沖での実証でも、浮体の小型化やチェーンアンカーの軽量化、地元港の活用によりコストを下げる努力が続けられてきました。事業化に向けては、洋上風力用作業船の充実や、送電線へのアクセス確保、送電容量の強化を目的とした送電網の整備も必要です。また、巨額の資金調達も課題です。

 昨年11月、国会で「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」が成立しました。同法では、再エネの固定価格買取制度(FIT)の認定を受けると、洋上風力発電事業で一般海域を最大30年間占用できるようになります。同法の具体的な運用方法については現在、関係省庁間で協議を進めています。

 日本の領海を含む排他的経済水域の面積は約450万平方キロメートルと世界第6位で、洋上風力発電のポテンシャルは高いとみられています。

 福島県沖での2メガワットと5メガワットの実証機を組み合わた運用方法開発やコスト構造の見直しにより、自律的な運用が将来可能となり、今後の洋上風力普及の礎となることを期待したいと思います。

 まつもと・まゆみ 東京大学教養学部客員准教授(環境エネルギー科学特別部門)。上智大学在学中からテレビ朝日のニュース番組に出演。NHK-BS1ワールドニュースキャスターなどを務める。環境コミュニケーション、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を研究する傍ら、シンポジウムのコーディネーターや講演、執筆活動などを行っている。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)理事。

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