王位継承物語

21世紀の君主制と皇室 「継続と安定」もたらす宝

 君主制の極意は、国や国民に「継続性と安定性」を与えてくれる点にある。政権が次々と交代しようが、任期のない王たちは外国との関係をつなぎとめてくれる。国内に民族間や政党間の対立などが生じたとしても、それを超越した王たちは「公正中立」の立場からこれを調整してくれる。君主制はいまの世にも大きな役割を果たしうるのだ。

 しかしそれは君主や王室が富や権力を集中し、かつての「絶対君主制」の時代の皇帝や王を気取った瞬間にもろくも崩れていく。民主政治と人権を尊重し広く「国民統合の象徴」となりうる立憲君主でなければ、さらには国民の多くの生活からかけ離れたような贅沢(ぜいたく)を嫌う「道徳的指導者」としての立憲君主でなければ、生き残りも難しい時代となっている。

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて、タイの近代化を推し進めた「チュラロンコン大王」ことラーマ5世国王は、かつてこう述べたことがある。「ヨーロッパで小麦が栽培されているのと同じやり方で、タイの土壌で米を育てることなどできない」

 確かに、その国や地域に長い間根づいてきた伝統や習慣を無視して、強引にヨーロッパ流の価値観をアジア諸国などに押しつけるのはよくない。しかし、民主政治や人権の尊重、男女平等、多文化共生といった考え方は、いまやグローバルな規模で定着しつつある。

 今年5月に天皇の代替わりを迎えるこの日本も含めて、21世紀の今日の国々が「継続性と安定性」を維持しつつ、国民全体が心身ともに豊かになるような社会を実現していくためには、君主制は決して「時代遅れ」の制度ではなく、またそれゆえに安定的な王位(皇位)継承もますます必要となってくるのではないだろうか。

 君塚教授の連載は今回で終了します。5年間ご愛読ありがとうございました。