一筆多論

和牛やイチゴの種を守れ 佐々木類

農水省の試算だと、イチゴだけでもこの5年間で最大220億円の経済的損失が出た。韓国への品種流出が明らかになったイチゴは「とちおとめ」「レッドパール」「章姫」など、人気の高いブランドだ。

長い時間と金をかけて開発した品種を基に新たな品種が韓国や中国で無断開発され、アジア各国へ輸出されている。栃木県が開発した「とちおとめ」は、あろうことか、韓国で無断生産された上に日本に逆輸入されていたこともあった。

海外で国内品種が無断栽培されても、その国で品種登録がされていなければ生産の差し止めは難しい。海外での品種登録には1件当たり100万~200万円かかるほか、手続きも煩雑で登録申請に及び腰になる栽培農家も少なくない。現在、任意の種苗団体が新品種を開発した農家に対し、海外での品種登録を支援しているのは心強い。

和牛やイチゴに代表される遺伝資源は国家の財産である。世界と勝負するためにも、ブランドの保護育成は欠かせない。(論説副委員長)

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