岩田由記夫の音楽の明日

トミー・リピューマ遺産 全45曲CD『ワークス』

 2017年3月13日にトミー・リピューマが逝って、2年が過ぎた。1960年~2010年代のアメリカを代表する音楽プロデューサーだった。グラミー賞に33度ノミネートされ、受賞は5度。プロデュースしたアルバムは全世界で7500万枚以上のセールスを記録している。

 今年度のグラミー賞を受賞したヒロ・ムライ氏の父、村井邦彦氏とは親交があり、LA在住の村井氏が一昨年来日した時にエピソードも伺った。村井氏は「翼をください」など数々の名曲を手掛け、荒井(松任谷)由実を音楽シーンに登場させ、YMOをデビューさせるなど数々の功績を残している。村井氏がアルファレコード(当時)の社長時代、リピューマとしばしば会い、YMOを世界デビューさせたら良いとアドバイスされたという。ジャンルを超えて、あらゆる音楽を手掛けてきたリピューマらしい眼力といえる。

 今年2月、48年間連れ添った妻ジル・リピューマが監修した3枚組45曲入りのCD『ワークス』がリリースされた。ジョージ・ベンソン、ジョアン・ジルベルト、マイルス・デイヴィス、ポール・マッカートニー、ダイアナ・クラールらジャンルを超えた幅広いミュージシャンをトミー・リピューマが、プロデュースしていたのが伝わる。CDの最後の曲はダイアナ・クラールが歌う「ナイト・アンド・デイ」。2017年にヒットした彼女のアルバム『ターン・アップ・ザ・クワイエット』からの選曲。このアルバムのプロデュースが最後の仕事となった。

 トミー・リピューマにはオーディオファンも魅了された。分離が良く、心地良いアコースティックサウンドが得意だった。「トミーにとっては、クオリティーが全てだった。アーティストのクオリティー、曲のクオリティー、プロダクションのクオリティーが。一時的な流行なんてひとつもなかった」。妻ジルの言葉が心に染みる。(音楽評論家)

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