2050年までに地球上には90億の人間が溢れ、2100年には110億人にまで膨れあがる--。そんな国連の予測に異議を唱える書籍が米国で話題になっている。米国で2月5日に発売された『Empty Planet(無人の惑星)』の著者ふたりは、なぜ数字の山を丹念に読み解くことで、従来とはまったく違った未来予測を提示することになったのか。
TEXT BY MEGAN MOLTENI
TRANSLATION BY TOMOYUKI MATOBA/GALILEO
WIRED(US)
ご存じの通り、人口抑制のための技術や規制や政策がどれだけあっても、人は生殖をやめようとしない。2050年までに地球上には90億の人間が溢れ、二酸化炭素を排出し、プラスティックごみを生み出し[日本語版記事]、カロリーを消費する。
その数は2100年には110億人にまで膨れあがり、ディストピア映画『ソイレント・グリーン』のシナリオが現実になるはずだ。こうした陰鬱な見通しは、SFの世界だけのものではない。最も信頼のおける国際機関のひとつである、国際連合の予測に基づくものだ。
だが、もしこの予測が間違っているとしたら? それも、丸め誤差による端数のズレなどではなく、完全に、まるっきり見当違いだったとしたら?
それこそが、米国で2月5日に発売された新刊『Empty Planet(無人の惑星)』で、カナダ人ジャーナリストのジョン・イビットソンと政治学者ダレル・ブリッカーがたどり着いた結論だ。彼らは数字の山を自ら丹念に読み解き、従来とはまったく違った、わたしたちヒトの未来予測を提示する。
「およそ30年で、世界人口は減り始めます」と、彼らは言う。「いったん減少が始まれば、二度と増加に転じることはありません」
ただし、『Empty Planet』は統計についての本というよりも、むしろ人類史上類を見ないこの激変の時代を生きる人々が下す決断と、その裏にある動機についての本だ。イビットソンとブリッカーは、インドのデリーにあるスラムや、ブラジルのサンパウロにあるオペ室に潜り込んだ。ベルギーのブリュッセルで開かれる晩餐会に集う若きエリートや、ケニアのナイロビにあるクラブで飲む若者たちの会話に聞き耳をたてた。