5年前のゴールデンウイークに、軍事政権下で行われていたという拷問捜査を描いた韓国映画「南営洞(ナミョンドン)1985」をみた。東京・渋谷の映画館を出ると、街頭に若者らの陽気な笑い声が響く中、ひとり暗鬱な気分になった。
映画の舞台は、ソウル市内の南営洞にあったアカ(共産主義者)を取り調べる治安本部対共分室。作品は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003~08年)で保健福祉相を務めた金槿泰(キム・グンテ)氏の手記を基に制作された。
民主化運動に携わっていた金槿泰氏は公安警察によって1985年に不当逮捕され、22日間にわたり、水や電気を使った拷問を受けたという。映画では、壮絶な拷問捜査の様子が描かれていた。
拷問捜査の元凶は“親日警察”
南営洞では実際に、ソウル大の学生運動家、朴鍾哲(パク・チョンチョル)さんが公安警察の取り調べの最中に浴槽の水に顔を浸す「水責め」と呼ばれる拷問を受けて死亡する事件(1987年)が起きている。当時、韓国社会を揺るがし、その後の民主化抗争の導火線にもなった大事件だった。
ソウル市内には、他にも拷問捜査の拠点があった。ソウル中心部の南山(ナムサン)には、かつて「韓国中央情報部」(KCIA)や「国家安全企画部」(安企部)と呼ばれた情報機関の取調室があり、軍事政権下では北朝鮮のスパイ摘発や反政府運動の取り締まり(拷問捜査)が行われていた。