再生・細胞医薬品の実現化などに力を入れる大日本住友製薬。デジタル技術を活用した新規事業も打ち出した野村博社長(61)に今後の戦略を聞いた。(安田奈緒美)
--再生・細胞医薬品にどう取り組むのか
「再生医療の究極は個別化医療だと考える。培養期間やコストなどの課題があるが、最終的に患者本人の細胞(自家細胞)に由来する人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて組織や臓器を作製し移植する治療の実用化を目指す」
--慢性期脳梗塞を対象にバイオベンチャー「サンバイオ」と開発中の再生・細胞医薬品は、米国での治験(臨床試験)で主要評価項目が未達となった
「内容を解析し、サンバイオと連携して今後の開発計画を検討する。過去に大規模な治験で良い結果が出なかったものの、詳細な解析結果を経て次の試験に進んだ開発例もある」
--昨年は米国で後発品メーカーに対する抗精神病薬「ラツーダ」の特許侵害訴訟の和解が成立した
「日米の知的財産部が地道に取り組んだ成果だ。当初想定より約4年間、後発品の発売が遅くなったことで生み出される売り上げを、今後の成長に向けた投資として、どう活用するか検討している」
--昨年の社長就任時に新規事業「フロンティア領域」を立ち上げるとした
「デジタル機器などを生かしながら、患者の生活の質の向上を支える医薬品以外の事業を目指している。将来の収益の柱の一つとして、15年後をめどに1000億円の事業規模にしたい。4月から専任部署も設ける」
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野村博(のむら・ひろし)氏 東京大経卒。昭和56年住友化学工業(現・住友化学)。平成20年大日本住友製薬。代表取締役専務執行役員などを経て30年4月から現職。千葉県出身。