新聞に喝!

「歴史」に堪えられる報道とは 作家・ジャーナリスト・門田隆将

台北市内の総統府で、産経新聞の単独取材に応じる蔡英文総統(左)=2月28日(田中靖人撮影)
台北市内の総統府で、産経新聞の単独取材に応じる蔡英文総統(左)=2月28日(田中靖人撮影)

東アジアは2月末から3月初めにかけて歴史に残る日々を送った。ハノイでの米朝首脳会談、韓国の3・1「100周年」に加えて、台湾の228事件記念日が集中していたのである。

これらは複雑に絡み合い、いずれも日本の安全保障に深く関わるものだ。インターネットに本来の役割を奪われ、衰退する新聞にとって、本領を発揮すべき好機だっただろう。しかし、この3つの歴史的事象に対応できた社は少なかった。

まず多くの新聞が米朝首脳会談を読み間違えた。トランプ米大統領が成果を欲しがって前のめりになり、北朝鮮ペースになっていると日本の新聞は思い込んでいた。だが、調べ上げた北の核開発の実態を突きつけた米国は譲歩せず、席を蹴る形で「合意なし」の選択をした。〈「屑(くず)鉄廃棄」の見返りに「制裁解除」に固執した北朝鮮は孤立と自滅を招く〉と辛辣(しんらつ)な論評をした韓国の東亜日報と対照的に日本の新聞は戸惑いを隠せなかった。

日本が譲れないのは、北の完全非核化と拉致被害者の早期一括帰国のはずなのに、記者たちがその視点を忘れ、他人事(ひとごと)のような記事が続いた末のことだった。日本国民の命をどう守るかという根本を新聞が見失っていなければ、ボルトン大統領補佐官と連携する国家安全保障会議(日本版NSC)への取材等(など)を通じて、もっと真相に肉薄できていたのではなかったか。

翌日の韓国の3・1「100周年」報道には、さらにその思いを強くした。〈文大統領、対日「未来志向」〉と朝日が書けば、毎日は〈相互尊重へ新たな歩みを〉と社説で訴えた。一方、読売は〈文氏3・1演説 問題の根底は異様な対日観だ〉との社説を掲げ、産経も〈「反日」で国をまとめるな〉と糾弾した。日本の安全保障を根底から覆(くつがえ)す文氏の朝鮮半島統一戦略に危機感を持って報じたのは、後者の側だった。

そして3つめの「台湾の228事件記念日」における報道である。年頭に中国の習近平国家主席が台湾に対して「一国二制度を受け入れよ」と演説したことで、台湾は待ったなしの激動期に突入した。蔡英文総統率いる民進党が昨秋の統一地方選で惨敗しており、来年の総統選で下野する可能性が高まる中、1947年の国民党による台湾人虐殺の「228事件」記念日は大きな注目を集めていた。