特派員発

政治生命かけた首都機能移転 エジプト・シーシー大統領

 エジプトの首都機能移転計画 「新首都」の総面積はシンガポールに相当する約700平方キロで、完成時には600万人が居住可能。現在はその4分の1に当たる第1フェーズ(約162平方キロ)の建設が進んでいる。大統領府や首相府のほか国会や各省庁が集まる政府エリア▽中東最大のオペラハウスが建つ文化エリア▽各国大使館が集まる外交エリア▽証券取引所を含む金融エリア-などができる見通し。大学など多数の教育施設に加えて国際空港も建設される。ドイツ企業などの事業参加により、インターネットやIT、太陽光発電など先端技術を駆使した国内初のスマートシティーを目指している。

 エジプト政府は人口増加に伴う都市問題の緩和を掲げ、首都機能移転を推進してきた。カイロに「三大ピラミッド」で知られるギザなど周辺の行政区を加えた「カイロ大都市圏」では年々、渋滞が深刻化し、大気汚染も進んでいる。

 問題解決のため同国政府に協力してきた独立行政法人、国際協力機構(JICA)エジプト事務所などの資料によると、1960年代中盤のカイロ大都市圏の人口は約520万人だったが、2017年には2380万人と4倍以上に膨らんだ。同じ期間に、自動車台数は人口を大幅に上回るペースで急増。約9万台から40倍以上の400万台を突破したとされる。

 渋滞・公害対策として日本の円借款による地下鉄の路線拡張事業も進んでいるが、路線バスの経路にはバス停や時刻表もなく、車両は老朽化している。長期的な都市政策を怠ってきたツケがきている格好だ。

 特に深刻なのが、街中の道路をふさぐ青空駐車だ。駐車場の慢性的な不足や余計な出費を惜しむドライバーが多いことが背景にあり、カイロ中心部のアブディン地区はその名所として知られる。ウイークデーの午後に同地区を訪れると、車道の両脇にそれぞれ2列ずつ駐車車両が隙間なく並んでいた。車の通行スペースは1台分しかない。

 これだけ並ぶと、キーを預かっておき車を出し入れする管理人も欠かせない。ここで毎日朝5時半から約12時間、働いているハサンさん(35)は、駐車料として1台当たり5エジプトポンド(約30円)を徴収し、月に最高2500エジプトポンドを稼いでいる。

 ハサンさんは取材に、「このあたりの銀行などが新首都に移転するという話もある。そうなったら駐車車両が減って収入にも影響が出る」と話した。こうした職業は駐車の規制に目が届かない政府に成り代わって、各地の市街地で自然発生的に生まれているとみられる。