特派員発

政治生命かけた首都機能移転 エジプト・シーシー大統領

広がる貧富の格差

 エジプトの対外債務は2月現在で約930億ドルに上り、国際通貨基金(IMF)の支援を受けている。昨年には燃料や水道などの料金が値上げされ、インフレ率は10%以上で推移。貧富の格差も広がっているといわれる。

 こうした状況の下、新首都建設に伴って軍の経済活動が拡大するようであれば、民間企業の成長を圧迫するといった弊害をもたらしかねない。

 カイロ大のサイエド教授は取材に対し、「首都機能移転事業は、その是非を問う国民規模の対話もなしに計画が進んでいる。建設の財源など詳細も不透明だ」とし、国際競争力がある製造業の育成や教育レベルの向上など、ほかに優先すべき課題があると主張した。

 教授はその上で、「ナセル氏はアスワンハイダム(1970年開業)を建設し、サダト氏は第4次中東戦争(73年)のときの大統領として国民の記憶に残っている。シーシー氏はこれらの過去の大統領にならって新首都計画を成し遂げ、歴史に名を刻みたいのでは」と推測した。

 折しもこの2月、エジプト議会で大統領任期を4年から6年に延長する憲法改正案が提出され、連続2期8年までと定めた規則が撤廃される可能性が出てきた。シーシー氏は現在2期目だが、欧米メディアによると2期目が終わる2022年から新たに2期12年務められるとの見通しが出ており、この方向で議論が進めば、最長で34年まで最高権力者の座にとどまることも可能となる。

 シーシー氏が長期在任の実現を視野に入れているとすれば、出身母体で国内に大きな影響力を誇る軍に加え、それを取り巻く企業集団の支持は不可欠だ。軍を重用した上で、新首都建設を是が非でも成功に導きたいと願っていたとしても不思議ではない。

 半面、政権と軍の持ちつ持たれつの関係が深まれば、エジプト経済の将来を担う民間の活力を奪うことにもなりかねないという危険性をはらんでいる。

 サダト氏の後で約30年間、大統領を務めたムバラク氏は在任中、南部アスワン近郊に運河を建設してナイル川から水を引き、砂漠の中に都市を建設してカイロなどからの移住を促進する大規模開発計画をぶち上げた。しかし移住は進まず、「政府の失敗」として人々に記憶されている。

 ムバラク氏の教訓を乗り越えて巨大プロジェクトを成功に導き、自らの権力の長期化に道筋をつけられるか。新首都建設がその過程における重要な一歩だとすれば、失敗が許されないことはシーシー氏自身が最もよく理解しているはずだ。