浪速風

擬装の作業服で小さく見えたカリスマ

ホンダの創業者、本田宗一郎さんが、皇居での勲一等瑞宝章の親授式に真っ白なツナギ(作業服)で出席しようとしたのは有名だ。「技術者の正装だから」。結局は燕尾服にしたが、本田さんは根っからの現場人間だった。同じ自動車メーカーのトップだったこの人の作業服は違う意味のようだ。

▶保釈された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告は、反射材を巻き付けた上下紺の作業服に、帽子、マスク姿で東京拘置所を出た。しかも玄関前に横付けされた大型ワゴン車には目もくれず、脚立を積んだ軽ワゴン車に乗り込んだ。誰が演出したのか、映画のようなカムフラージュである。

▶108日間に及んだ勾留でやつれた姿を見せたくなかったのか。それとも行き先を知られたくなかったか-。だが、すぐに報道陣にばれてしまい、擬装は意味がなかった。事件の真相は裁判で明らかになるだろうが、強気に「無実」を主張する元カリスマ経営者が小さく見えた。