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宇宙の成り立ちを探るため、日米欧などの物理学者が東北地方に建設する構想を進めている巨大な実験施設の次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について文部科学省は7日、建設を誘致する可能性を探るため、米欧と国際的な意見交換を行うなどとする政府方針を正式発表した。
東京都内で開催中の素粒子物理学の国際会議で表明した。誘致の意思表示には至らなかったが、計画について真剣に検討する姿勢を各国に示した。
文科省の磯谷桂介研究振興局長は記者団に「関係省庁とともに検討した現段階の見解を示した。段階は前に進んだ思う」と述べた。
見解では、建設誘致について国内の科学コミュニティーの理解が得られるか日本学術会議での正式な議論が必要だと指摘。欧州の研究戦略の議論も注視するとした上で「ILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続する」とし、従来の米国だけでなく新たに欧州と意見を交換する場を立ち上げる考えを示した。
ILCは岩手・宮城両県にまたがる北上山地に建設する構想を物理学の国際組織が平成25年に発表。日米欧が分担する総額8千億円に及ぶ建設費が課題となり、政府は誘致について見解を表明していなかった。科学技術の振興や東北の復興につながる波及効果を重視したとみられる。
ILCは全長20キロのトンネル内で、粒子をほぼ光速に加速し衝突させ宇宙誕生直後の超高温状態を再現。万物に重さを与える素粒子のヒッグス粒子を作って性質を調べ、宇宙の成り立ちを探る。物理学の新理論を切り開くノーベル賞級の成果が期待されている。