浪速風

春告げるイカナゴ漁 くぎ煮はおふくろの味

今日は冬ごもりの虫がはい出るという二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」。何に春を感じるかは、土地によって、人によってさまざまだろうが、神戸や明石では瀬戸内海のイカナゴ漁の解禁が春の訪れを告げる。旅人が漁師に「いかなる魚の子か」と尋ねたことからその名がついたそうだ。

▶稚魚の「シンコ(新子)」はくぎ煮にされる。錆びて折れ曲がった古くぎのような姿の佃煮である。平成7(1995)年の阪神大震災では、大勢のボランティアがやって来て、義援金や支援物資も届けられた。お礼にくぎ煮を送ったところ、全国的に知られるようになり、関西みやげの定番になった。

▶本来は家庭の味で、保存ができるので大量につくる。この時期、くぎ煮を炊く甘辛いにおいが街に漂う。神戸市長田区の振興協会が主催する「いかなごくぎ煮文学賞」で、グランプリに輝いた作品に「くぎ煮炊く母との会話味わって 顔知らぬ祖母へ想いをはせる」。かみしめると味がある。