衝撃事件の核心

すれ違った「親心」 彦根警官射殺事件の背景

警察官射殺事件が起き、物々しい雰囲気に包まれる河瀬駅前交番=平成30年4月、滋賀県彦根市
警察官射殺事件が起き、物々しい雰囲気に包まれる河瀬駅前交番=平成30年4月、滋賀県彦根市

滋賀県彦根市の彦根署河瀬駅前交番で昨年4月、同署の井本光(あきら)巡査部長=当時(41)、警部に特進=が同僚の元巡査の男(20)=懲戒免職=に拳銃で射殺された事件。大津地裁(伊藤寛樹裁判長)は今年2月、「当時19歳とはいえ、現職の警察官が勤務中に拳銃で同僚の警察官を殺害する空前絶後の重大な事案」として、元巡査に懲役22年(求刑懲役25年)の判決を言い渡した。凶行の背景に、井本巡査部長の厳しい指導の裏に隠された部下の成長を願う気持ちと、それを苦痛に感じていた元巡査の心のすれ違いがあったことも公判で明らかにされた。

配属前から不安

「間違いありません」。1月30日に開かれた初公判。スーツ姿で入廷した元巡査は無表情で淡々と起訴内容を認めた。短髪でニキビ痕がある顔にはまだあどけなさが残る。

野球部の活動に打ち込んだ高校時代から警察官を志望していた元巡査は、幼少期から成績の良い兄や妹に対して劣等感を抱いていたという。被告人質問では「警察の採用試験に合格して初めて自分に誇れるようなことができ、うれしかった」と振り返った。

現場となった河瀬駅前交番に配属されたのは事件の約2週間前。そもそも井本巡査部長は厳しい指導で知られていた。「深夜のパトロール中に助手席で寝ていてしばかれた」。井本巡査部長の指導を受けた別の警察官からそんな話を聞き、「やっていけるかな」と不安に思うとともに、「迷惑をかけないよう必死でやろうと思った」という。

しかし不安は的中した。「なんでわからんねん」「全然違う」。何をするにしても厳しい言葉が返ってきた。中でも苦しんだのは書類の作成だった。