【イタリア便り】当地を愛したドナルド・キーン先生 - 産経ニュース

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当地を愛したドナルド・キーン先生

【イタリア便り】当地を愛したドナルド・キーン先生
【イタリア便り】当地を愛したドナルド・キーン先生
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 先月末、96歳の人生を全うされた日本文学研究者のドナルド・キーン先生は大のイタリア好きであった。一時は毎年、イタリアを訪れてわが家で食事をなさるのが慣習だった。

 中でも、元上智大理事長・学長で、当時はグレゴリアン大学長だった故ヨゼフ・ピタウ大司教もお招きしたときの超知日外国人お二人による「日本食談議」は、私たち夫婦もそばで大笑いしたほどの傑作で、このコラムでも紹介したことがある。

 先生の日本文学への驚嘆すべき造詣の深さと、三島由紀夫や川端康成ら日本の代表的文人・知識人との交友は周知のことだが、音楽とオペラにも大変通じていらっしゃった。ローマやベネチアの音楽会やオペラに行くのがお好きで、家内が来伊に合わせて切符をあらかじめ買い、お待ちしたものだった。先生はイタリア語で大学の講義をしてくださったことがあるほどイタリア語に堪能で、オペラの歌詞を暗記して独学なさったとのことだった。

 最後においでになったのは2015年6月だ。養子で浄瑠璃三味線奏者のキーン誠己(せいき)氏に、欧州の知人友人を紹介し、ご自分が好きだった場所を案内なさるためであった。ローマでは、92歳で聖天使城のてっぺんまで歩いて上がるほどのお元気さで、突然の悲報に驚いている次第である。(坂本鉄男)