「ダークマター」の正体に迫れるか? 宇宙の謎を巡る研究に方向転換の動き

「そのほかの実験でも兆しはありましたが、確固たる信号が得られた実験はDAMAだけです」と、マルヤマは話す。マルヤマはDAMA実験には参加していない。

DAMAは20年にわたって、6月に最大となり12月に最小となるように変動する信号を継続して測定してきた。この信号は、公転軌道上の地球の位置に応じて異なる速度でダークマターが地球に衝突することを示唆するもので、理論による予測と一致している。

だがDAMAの探査では、これ以外に有望な信号はほとんど得られていない。2018年に複数の検出器で「検出なし」との報告があった。DAMAと同じイタリアの研究所に検出器が設置されている共同研究プロジェクト「XENON1T[日本語版記事]」は18年5月、これまでのところ何も発見されていないと発表した。中国を拠点とするダークマター検出実験「Panda-X」も18年7月、何も見つからなかったと公表した。

さらには、DAMAの実験結果でさえも疑問視されてきている。マルヤマのチームは韓国で、DAMAと同型の検出器を運用している。重量約200ポンド(約91kg)のヨウ化ナトリウム結晶で構成される検出器だ。しかし同チームは18年12月、イタリアの先行研究の結果を韓国の検出器では再現できなかったと発表した。

「WIMP疲れ」する研究者たち

これらの検出実験はみな、特定のダークマター候補を探すように設計されている。つまり、「WIMP(Weakly Interacting Massive Particle)」と呼ばれる理論上の素粒子のことだ。WIMPは(電磁気的な)相互作用をほとんど起こさない、重い質量をもつ素粒子であり、電子の100万倍の質量を持つと推測されている。

何年もの間、ダークマター研究の主流となっているWIMPに対してうんざりしているのは、カリフォルニア大学バークレー校の天体物理学者ミゲル・スマラカレギだ。10年ほど前、スマラカレギがまだ博士課程の学生だったころ、WIMPの研究者たちはすでに発見が目前に迫っていると見込んでいた。「彼らはただ手ぶらで戻ってきています」と、スマラカレギは言う。

WIMP疲れを感じているのは、スマラカレギだけではない。ワシントン大のリブカは、「ある意味、WIMPにはずっと前からうんざりしていました」と話す。リブカは、もうひとつのダークマター候補を追い求める実験を主導しているひとりだ。それは「アクシオン(axion)」と呼ばれる非常に軽い素粒子で、質量は電子の約10億分の1しかなく、WIMPよりもはるかに軽い。

会員限定記事会員サービス詳細